会社四季報は企業分析をする上でとても有益な情報誌となります。
年に4回発売される四季報は「新春号・春号・夏号・秋号」と各号に分かれており、実はそれぞれの号には特徴があることを知っているでしょうか?
今回は会社四季報の各号の特徴をご説明したいと思います。
まず会社の決算について理解する
四季報の各号の特徴を理解する上で、会社の決算について理解しておかないといけません。ですので、まずは会社の決算について説明していきます。

会社の決算月とは?
会社は1年間の事業活動を決算という形でまとめます。
その1年間の区切りとなる月が決算月となります。
例えば3月決算の会社の場合、4月1日〜翌年3月31日の間の事業活動のまとめをします。
ここで注意が必要なのが、2019年4月1日〜2020年3月31日の1年間の決算の場合、事業活動の大半が2019年ですが、【20年度の決算】という表記の仕方になります。
上場している会社の70%がこの3月決算を採用しており、四季報を見るときには3月決算をメインに据える必要があります。
そして昨今のグローバル化を受けて増えているのが12月決算です。
12月決算の場合、1月1日〜12月31日の間の事業活動のまとめをします。
12月決算の場合、2019年12月31日で締めるので【19年度の決算】という表記になります。
四半期決算とは?
四半期決算とは1年間を4分割して、3ヶ月ごとに企業が業績を決算することです。2003年から全上場会社に義務付けられました。
それぞれに名前が付けられており、3月決算の場合
- 4月1日〜6月31日までで第1四半期決算(1Q)
- 7月1日〜9月30日までで第2四半期決算(中間決算)
- 10月1日〜12月31日までで第3四半期決算(3Q)
- 1月1日〜3月31日までで第4四半期決算(本決算または期末決算)
※( )内は短略表記
決算と報告日のズレに注意!

といった頓珍漢なことを思っていた人はいないでしょうか?
そうです、私のことです笑
よく考えれば当たり前のことなのですが、実際しっかりと把握している人は少ないかと思います。
例えば3月決算の会社に対して、12月31日を過ぎたから、1月10日に「報告でてるかな〜」と確認しても早すぎるのです。
実は12月31日を過ぎて、1月中は会社としてはデータの集計中だったり、「いつ・どのタイミングで報告をしようか」と審議中だったりします。
ですので、決算の締切日を過ぎてから1ヶ月ほど過ぎた2月初旬に報告日が集中します。
これと同じことが1Q決算・中間決算・3Q決算・本決算と起こるので、それを把握して待つ必要があります。
3月決算の場合・・・ | 決算締切 | 大体の報告日 |
第1四半期(1Q) | 6月31日 | 8月初旬 |
第2四半期(中間決算) | 9月30日 | 10月初旬 |
第3四半期(3Q) | 12月31日 | 2月初旬 |
第4四半期(本決算) | 3月31日 | 5月初旬 |
ちなみに2017年度3Q決算の報告日の傾向としては
- 1月初旬0.2%(3社)
- 1月中旬0.6%(6社)
- 1月下旬30.9%(554社)※1月31日に275社
- 2月初旬58.5%(1048社)※主に金曜日に集中
- 2月中旬9.8%(176社)
という結果となりました。
2017年1月31日は火曜日だったのにもかかわらず275社が報告をしており、2月初旬でも2017年2月3日金曜日に163社、2月10日金曜日に280社となっており、金曜日に集中していることがわかります。
統計を集計していてわかったことは以下の2点です。
- 決済締め切りの次の月の最終日に集中(今回は1月31日)
- 報告日が集中する月の最初の金曜日と次の金曜日に集中
以上の2点が決算報告日の基準となりそうです。
決算報告における修正報告について
会社は本決算の報告のついでに来年度の目標を掲げます。(これを業績予想と言います)
その目標に向けて1年間事業活動をしつつ、3ヶ月に一回振り返りの決算報告をします。
例えば「今年度は100億円売り上げます!」と目標を立てて、頑張っている会社があったとします。
なんと9ヶ月経った時点で売り上げが90億円に達していたとします。
あと3ヶ月を残して、たった10億円で目標を達成してしまうのは簡単ですよね?
会社は予想より大きくズレが生じそうな時には、決算報告の時に修正報告を入れる義務があります。
上に大きくズレそうな時は上方修正をし、下に大きくズレそうな時は下方修正をします。
実はこの修正報告が一番多くなる時期が、3Q決算報告の時なのです。
例えば、100億円売り上げ目標の時に、
- 3ヶ月時点で30億円
- 6ヶ月時点で60億円
- 9ヶ月時点で90億円
この3パターンなら、一番確信を持って上方修正を入れることができるのはどのタイミングだと思いますか?
3ヶ月・6ヶ月時点では「誤差の範囲内かもしれない・・・」と思って修正を入れづらいですよね?
ですので、9ヶ月時点である3Q決算報告で上方修正を入れる会社が多くなるのです。
場合によっては、「6ヶ月時点で60億円売り上げたから、確実だわ!」と判断して、中間決算で上方修正を入れる会社もあります。
四季報の各号の特徴について
ではやっとの事で四季報の各号の特徴について説明したいと思います。
各号の発売時期
四季報は年に4回発売され、それぞれ夏号・秋号・新春号・春号と名前が付けられています。
- 【3集 夏号】6月中旬に発売
- 【4集 秋号】9月中旬に発売
- 【1集 新春号】12月中旬に発売
- 【2集 春号】3月中旬に発売
ここで注目ポイントが2つあります。
- なぜ2015年と2016年が混ざっているのか(上の図の画像)
- なぜ3集→4集→1集→2集という微妙な順番なのか
これらは私が適当だからではありません。ちゃんと意味のある順番です。
実はこの2015年3集夏号〜2016年2集春号の中身で、2016年度決算の一連の予想をしてくれています。
・・・・・なんのことかさっぱりだと思いますが、それをこれから説明していきます。
3集夏号の特徴
まず会社四季報3集夏号の説明からしていきます。
ほとんどの会社の本決算の締切は3月31日ですが、1ヶ月ほどの集計時間を設けて、報告日は5月初旬になります。
実は四季報はその前年度の本決算の報告を待って、報告が出揃う6月初旬から出版物の編集を始め、最終的に6月中旬には会社四季報3集夏号を発売します。
つまり、会社四季報の中で前年度の本決算情報が載っている夏号は、【スタート的位置付け】であり、「これから1年間でこの会社がどうなるか」をある程度予測してくれているのです。
そしてもう一つの特徴としては【3Q決算に向けてどうなるかを予測】してくれているという点です。
先の章で説明したようにサプライズ報告(上方修正など)が多くなるタイミングは3Q決算報告です。そのため、夏号ではスタート時点で上方修正が入りそうな銘柄に着目しています。

しかも夏号独自の特集として、各会社の上方修正・下方修正の報告回数を2期分載せています。
4集秋号の特徴
次に発売されるのが4集秋号です。
会社の1Q決算の締切は6月31日ですので、報告日は8月初旬になります。四季報はその1Q決算報告が出揃う9月初旬から分析と編集を急ぎ、秋号を9月中旬に発売します。
夏号がスタートラインであったのに対して、秋号は1Q決算情報を加味した状態で出版するので【より精度の高い予測】となります。
1集新春号の特徴
12月中旬に発売される新春号が一番重要な号です。
会社の中間決算の締切は9月31日ですので、報告日は11月中旬になります。四季報は中間決算報告が出揃う12月初旬から分析と編集をして、新春号を12月中旬に発売します。
夏号・秋号はこの新春号のために予測精度をだんだんと上げていて、この新春号が発売された1ヶ月後ほどにサプライズの多い3Q決算報告が待っています。
新春号からはそれぞれの会社の進捗度が表記され、中間決算時点で70%や80%の進捗度の会社などを見つけると「もしかしたら3Q決算で上方修正入るか?」と考えたりできます。
しかし、ここで気をつけていただきたいのが、この新春号の発売前や直後にすでに株価が値上がってしまっており、【織り込み済み価格】になっていることもあります。
そうすると上方修正が入ったとしても「なんだこんなもんか」と失望売りに走り、株価が下落するなんてことが良くあります。

2集春号の特徴
そして最後に発売されるのが春号です。
会社の3Q決算の締切は12月31日ですので、報告日は2月中旬になります。四季報は3Q決算報告が出揃う3月初旬から分析と編集をして、新春号を3月中旬に発売します。
春号では1Q決算・中間決算・3Q決算情報とほとんど今年度の決算はどうなるかが見えている状態になります。
ですので、5月中旬の本決算でどうなるかを予測してくれています。
さらに春号は今年度を見越した上で、【来年度の決算】を見越して予測をしてくれています。ある意味で総決算の号といえるでしょう。
四季報各号の特徴まとめ
それでは会社四季報の各号の特徴をまとめたいと思います。
号 | 確定情報は? | 特徴 |
3集 夏号 | 前期の本決算 |
|
4集 秋号 | 今期の1Q決算 |
|
1集 新春号 | 今期の1Q&中間決算 |
|
2集 春号 | 今期の1Q&中間決算&3Q |
|