この記事ではJエリアの解説をしています。
J【業績】
【業績】では各年度ごとの「1年間の営業成績」を表示してくれています。
会社経営者は株主から預かった資産(自己資本)を1年間の活動を通して大きくして(純利益を積み上げて)いきます。
純利益が黒字であれば自己資本が増え、赤字であれば自己資本が低くなります。
貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の関係
Eエリアの【財務】が貸借対照表(BS)であるのに対して、Jエリアの【業績】は損益計算書(PL)となります。
この2つの関係性は、ある時のBSに対して1年間の成績であるPLを加算した結果、新しいBSが更新されていく関係性になります。
【業績】の基本的な見方
【業績】の左側には「どの年度の報告・予想なのか」が記載してあります。
網掛けのある部分は四季報が独自に予想した部分で、それ以外は会社が発表したデータとなります。
例えば3月決算の会社の場合、
連16.3 | 2016年3月末で締め切りになる本決算のデータ |
連17.3予 | 2017年3月末で締め切りになる本決算のデータを四季報が予想 |
中15.9 | 2015年9月末で締め切りになる中間決算のデータ |
中16.9予 | 2016年9月末で締め切りになる中間決算のデータを四季報が予測 |
四15.4-6 | 2016年4月〜6月末で締め切りになる四半期決算のデータ |
会17.3予 | 2017年3月末で締め切りになる本決算を会社が予想したデータ |
年4回の各号によって【業績】の表記が若干異なります。
このように、一見すると見づらいですが流れが四半期決算の流れがわかっていると理解が進みます。
決算月と四季報各号の関係性を知らない方は以下の記事に詳しく説明しています。
四季報の独自予想は重要ポイント!
先ほどの基本的な見方の中に「予」がついたものが四季報の独自予想の数値ですが、これが四季報を買うことによる一番の強みと言っていいでしょう。
よく見ると【業績】の一番下の「会社が発表した業績予想」と「四季報の独自予想」の数値が違います。
四季報では各会社で担当記者を設定していて、その記者が同業他社にも取材をすることで独自に業績を予想します。
また業種の全体的な動向や、日本全体の動向なども加味して予想し、さらに四季報編集部のチェックを受けた上で発売されます。
会社が出す業績予想というのもクセが存在しており、予想よりも小さいく発表するクセだったり、大風呂敷を広げるクセのある会社とさまざまです。
それらのクセも担当記者は把握して独自予想を出します。
会社の業績予想のクセは以下の記事で詳しく解説しています。
このように本来自分たちで情報収集をしなければ得られないような細かい情報まで四季報では予想してくれているという点でも、四季報を買う意義は十分にありますね!
【業績】の6項目
【業績】では「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」「1株益(円)」「1株配(円)」の6項目に分かれて記載してあります。
それぞれ順番にいろいろな収支が計算されて算出されていきます。では、順番に確認していきましょう!
売上高
6項目の中で一番基本となるのが売上高です。会社が儲かっているかどうかは「利益」で判断しますが、その大元である売上高がなければ利益もありません。
100億円の売上高に対して利益5億円の会社をがあり、目標利益10億円達成を考える時には2通りの考え方があります。
- 利益率向上・・同じ100億円売上高で、95億円の支出を90億円に抑える
- 売上高向上・・200億円を売り上げて、10億円の利益を得る
一時期は利益向上のために「節約だ!経費削減だ!」という流れでしたが、1の場合はいずれ限界がやってきます。
利益率の向上というのはとても大切なことですが、②の売上高を上げるということが根本的には大切なことだということを覚えておいてください。

利益率を求める方法の一つとして、営業利益 ÷ 売上高 = 売上高営業利益率があります。
同業種で比較することで利益率からの強さを求めることができます。また、ネット業界・サービス業は原価があまりかからないので利益率は高くなります。
売上高は基本的に売上数量×販売単価で計算されます。
この売上高から売上原価を引いたものが売上総利益といい、四季報では記載されていません。業績予想記事で時々触れている程度です。
営業利益
営業利益は、売上高から売上原価、販売・管理費を引いたもので、本業での儲けを示しています。
四季報では会社の収益力を見る上でとても重視している数字です。
簡単に言ってしまうと会社が材料を仕入れて製品を作ったり、サービスを提供したりなど「どれだけ付加価値を付けられたのか」を見ることができます。
- 売上原価・・・減価償却、研究開発費など
- 販売費・・・・広告宣伝費、販売促進費など
- 管理費・・・・営業部門人件費など
【売上原価】減価償却費で気をつけるポイント
減価償却費というのは、例えば工場を建設してかかった費用30億円を規定の利用年数で割って、その利用年数分を費用計上できます。
製造原価に占める減価償却費の比率が高いと、営業利益が低く見えてしまうことがありますが、費用計上期間が終了すると営業利益が急回復することがあります。
なので先行投資として設備投資にお金を回していて、一見すると営業利益が低く見えている場合もあるので気をつけましょう。
【売上原価】研究開発費で気をつけるポイント
企業というのは常に投資をし続けて、新しい付加価値を提供し続ける必要があります。次世代の製品を生み出すための研究開発費というのはとても大切です。
研究開発費が膨らんでも営業利益が低くなりますが、その研究内容が今後の利益にちゃんと繋がるものと判断できたとしたら、営業利益が低くても注目するに足る銘柄といえるでしょう。
【販売・管理費】で気をつけるべきポイント
販売費には、広告宣伝費や販売促進費などが含まれます。これらを経費削減のために削ると、一時的には営業利益を上げることになりますが、将来的には売上高が伸び悩む要因ともなります。
また管理費には、管理部門の人件費などが含まれます。製造に関わる人件費は製造原価に入ります。
経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収支(営業外収益と営業外費用)を加減したものです。
営業利益は「その会社の本業での稼ぎ」に対して、経常利益は「その会社の本業以外の稼ぎも含めた利益」を示しています。
- 営業外収益・・・受取利息、配当金、持分法投資利益、為替差益など
- 営業外費用・・・支払利息、持分法投資損失、為替差損など
持分法投資利益・損失とは?
営業外の収支の中に、持分法投資利益・損失がありましたが、これについて説明したいと思います。
例えばA社がa社とb社の株を購入した時
- a社への持ち株比率50%以上・・・a社は子会社
- b社への持ち株比率20%〜50%未満・・・b社は関連会社
という位置付けになります。
連結決算では、子会社は原則として全部連結され、売上高・営業利益に加わります。
関連会社は持ち株比率に応じた分を売上高・営業利益に加わります。
四季報の【業績】を見ていくと、営業利益<経常利益になっている会社がありますが、これは子会社・関連会社の影響によるものと考えられます。
なのでグループ全体として好調なのかどうかは親会社の経常利益を見ることで、周辺グループの損益も判断することができます。
純利益
純利益は、経常利益から特別利益・損失と法人税などを加減したものです。
この純利益が貸借対照表(BS)の自己資本に入り、次期の活動に使われる部分となります。
また、この純利益を発行済株式数で割ったものがEPS(1株益利益)になりますので、純利益の変化には注意が必要です。
- 特別利益・・・土地や投資有価証券売却益など
- 特別損失・・・土地や投資有価証券売却損、減損損失、子会社関連損失など
- 法人税など・・・法人税、住民税、事業税など
特別利益・損失とは?
特別損益とは、土地売却益や工場設備の廃棄損などの一時的(特別な)損益のことを言います。
他にも減価償却費の修正や、引当金の過不足修正などで特別損益が適応されます。
また、災害損失なども含まれるため、「あれ?営業利益が上がっているのに、純利益が大きく下がっている・・・?」という場合などは、何か大きな特別損失があったと考えられます。
1株益
1株益は「1株あたり純利益」と言いますが、EPSとも表記します。
計算式は簡単で、純利益 ÷ 発行済株式数 で求めることができます。
この1株あたり純利益はPER(株価収益率)につながる重要な指標です。
1株配
1株配は「1株あたり現金配当金額」のことを言います。1株配は以下のデータが載ります。
- 過去の実績値
- 今期・来期の予想(年額)
- 中間決算の過去1期分の実績値
- 中間決算の今期予想
1株益と1株配で株式分割があった場合
1株益と1株配の数値は株式分割があった場合、株式分割後のデータに基づいて数値の調整が入ります。
その場合、過去の1株益・1株配の数値が全部変わってしまうので、修正がある場合は*が入っています。
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