この記事ではEエリアの【キャッシュフロー】の解説をします。
E【キャッシュフロー】
キャッシュフローでは、営業CF・投資CF・財務CF・現金同等物の4セクターからなっています。
項目共通で気をつけていただきたいのが、( )なしの数字は< >で示された日付のデータで、( )付きの数字はその前期の過去データとなります。
では、まずはキャッシュフローの理解から始めましょう!
キャッシュフロー(CF)とは?
キャッシュフローとは「実際のお金の流れ」のことを言います。
自分の手元にお金が入ってくるとプラスCF、逆にお金が出て行くとマイナスCFとなります。
ここで損益計算書(PL)との違いとして、実際のお金の移動が伴った時に初めてCFが計上されます。
例を示してみましょう。
- かっこいいネクタイを5000円で買った・・・マイナスCF
- 中古テレビを友達に1万円で売った・・・プラスCF
- 先月の給料が振り込まれた・・・プラスCF
- 今月は30万稼いで来月に振り込まれる・・・CFなし
- 友達から10万円借りた・・・プラスCF
- 友達に10万円貸した・・・マイナスCF
この例からも分かるように、キャッシュフローというのは実際にお金の移動があったのか、なかったのかが大切になります。
なぜ実際のお金の移動が大事なのか?
例えば今あなたの手元に50万円あったとします。
クレジットカードで40万円分の必要な材料を購入して、100万円相当の商品を作り、A社に販売契約ができたとします。
そして次にあるビジネスのために30万円を払いましたが、10万円しか収益になりませんでした。
この時損益計算書(PL)上では「40万円の買掛け金に100万の売掛け金で利益は60万円」と「30万の経費に10万円の収入で利益は-20万円」表記され、プラスマイナス40万円となり稼ぎとしてはとてもいいものです。
ですが、40万円のクレジットカードの支払い期日が三日後に迫ってきた段階で、100万円の振り込みが再来月だった場合、あなたは(50-30+10)=30万円しか手元にないので、その月で黒字倒産となります。
なぜこんなことが起こったのかを解明するにはキャッシュフローに着目するとわかります。
この1ヶ月であなたのキャッシュフローはどうなっていたかというと
- クレジットで40万円分の材料購入・・・・CFなし
- 100万円相当の商品を契約完了!後日入金予定・・・・CFなし
- ビジネスで30万円払う・・・・-30万円CF
- 10万円の収益を得る・・・・+10万円CF
結果としてこの1ヶ月では-20万円CFとなっていて、手元にお金がなくなっていた状態だったのです。
実は売掛け金・買掛け金が当たり前の会社においてはこのようなことが当たり前のようにおきます。
ですので、「実際のお金の流れはどうなっているのだろうか?」という視点が大事なのです。
E 営業CF
営業CFとは、「本業に置いて1年間で実際にお金が稼げているのか、稼げていないのか?」を見ることができます。
- 営業CFがプラス・・・【本業がうまくいっていて、手元にお金が入ってきた】
- 営業CFがマイナス・・・【本業がうまくいっておらず、現金が手元からなくなった】
ですので、基本的には営業CFがプラスの物が会社として健全ということになります。
営業CFがプラスになる要因
- 本業が健全に働いて、「かかるお金<得るお金」の状態
- 前年の売掛け金が回収できた
- 在庫を一掃できた(作ってた分が売れた)
営業CFがマイナスになる要因
- 本業がうまくいってなくて、「かかるお金>得るお金」の状態
- 売掛け金の回収が停滞している
- 在庫が膨らんでいる(作っても売れない)
- どんどん商品を売って、売掛け金が一時的に溜まる(一時的なマイナスCF)
E 投資CF
投資CFとは、「投資(設備投資・土地の購入など)に1年間でお金をどのように使ったか」を見ることができます。
- 投資CFがプラス・・・【資産の売却によって、手元にお金が入ってきた】
- 投資CFがマイナス・・・【資産を購入して、お金を払った】
基本的に会社というのは常に投資にお金を回す(設備の購入・整備など)必要があるため、投資CFがマイナスの会社が健全と言えるでしょう。
投資CFがプラスになる要因
- 持っていた土地や建物を売却した
- 持っていた株を売却した
- 貸していたお金(貸付金)が返ってきた
投資CFがマイナスになる要因
- 土地や建物を購入した
- 設備を購入した
- 株を購入した
- お金を貸し出した
E 財務CF
財務CFとは、「お金の余りをどのように使ったか、もしくは不足をどのように補ったか」を見ることができます。
- 財務CFがプラス・・・「どこからかお金を手に入れてきた=お金が足りなかった」
- 財務CFがマイナス・・・「お金をどこかに渡した=お金が余ってた」
基本的に会社が健全であればお金は貯まっていくので、財務CFがマイナスの会社が健全と言えるでしょう。
財務CFがプラスになる要因
- 銀行からお金を借りてきた
- 増資によって資金を調達した
- 社債を発行して資金を得た
財務CFがマイナスになる要因
- 銀行に借金を返した
- 自己株買いをした
- 株主に配当を支払った
CFで見る会社の状態8パターン
営業CF・投資CF・財務CFと3つの視点で会社の状態がわかることを説明しましたが、2×2×2=8パターンで会社の状態を診断することができます。
まず営業CFがプラスの4パターン
営業CF | 投資CF | 財務CF | |
パターン① | + | + | + |
パターン② | + | + | ー |
パターン③ | + | ー | + |
パターン④ | + | ー | ー |
そして営業CFがマイナスの4パターン
営業CF | 投資CF | 財務CF | |
パターン⑤ | ー | + | + |
パターン⑥ | ー | + | ー |
パターン⑦ | ー | ー | + |
パターン⑧ | ー | ー | ー |
以上の8パターンとなります。では、それぞれの特徴を説明していきましょう!
パターン①営:投:財 = +:+:+
営業CF | + | 投資CF | + | 財務CF | + |
このパターンは本業はしっかりと機能しています。
土地や株などの資産を売却して資金を得ていて、銀行か増資でもって資金を借り入れています。
つまりお金をいっぱいかき集めている状態であることがわかります。
ですので、何か資金需要の高い計画をこれから行う予定で、そのために資金集めを行っている会社ということがわかります。
パターン②営:投:財 = +:+:ー
営業CF | + | 投資CF | + | 財務CF | ー |
このパターンは本業はしっかりと機能しています。
土地や株などの資産を売却して資金を得ていて、借金の返済にお金を使っています。
つまりお金を稼いで&手に入れて借金を返している状態であることがわかります。
ですので、財務体質を改善するために行動をしている会社ということがわかります。
パターン③営:投:財 = +:ー:+
営業CF | + | 投資CF | ー | 財務CF | + |
このパターンは本業はしっかりと機能しています。
銀行か増資でもって資金を借り入れながらも、土地や株などの投資にお金を注いでいます。
つまり、借り入れをしてでも投資にお金を回したいというかなり攻めの姿勢の会社ということがわかります。
8パターンの中で2番目に良い状態と言えます。
パターン④営:投:財 = +:ー:ー
営業CF | + | 投資CF | ー | 財務CF | ー |
このパターンは本業はしっかりと機能しています。
土地や株などの投資にお金を回しながらも、しっかりと借金返済や配当の支払いをしています。
つまり本業がちゃんとうまく機能していて、投資も返済もしている健全な会社ということがわかります。
8パターンで1番健全な状態と言えます。
パターン⑤営:投:財 = ー:+:+
営業CF | ー | 投資CF | + | 財務CF | + |
このパターンは本業がうまくいっていなくて、土地や株の売却と借金の借り入れや増資によって足りない分を補っている会社です。
本業がうまくいっていない時点でダメですが、それを投資売却と借金で補っているので、抜本的に本業を成立させないとジリ貧の状態になってしまいます。
パターン⑥営:投:財 = ー:+:ー
営業CF | ー | 投資CF | + | 財務CF | ー |
このパターンは土地や株の売却で得たお金を、本業がうまくいっていない分と借金返済の分に充てていることがわかります。
やはりこのパターンでも本業を成立させないと、これまで積み上げてきた資産がなくなった時にアウトになってしまいます。
パターン⑦営:投:財 = ー:ー:+
営業CF | ー | 投資CF | ー | 財務CF | + |
このパターンは本業がうまくいっていないが、借金をしてでも投資にお金を回していることがわかります。
攻めの姿勢はいいのですが、財務体質が悪化する上に、投資判断を間違うと一気に辛い状態になってしまう。ある意味ギャンブラー的会社。
パターン⑧営:投:財 = ー:ー:ー
営業CF | ー | 投資CF | ー | 財務CF | ー |
このパターンは本業がうまくいっていないけど、投資にお金を回しながらも借金返済しているという意味がわからない状態。
実は過去に現金の蓄積(現金同等物)があって、それを使うことでその場をしのいでいる会社。
しかし、このパターンは営業CFが+に転じた時に一番いいパターンに転じるので、本業が改善すると健全な会社になれる。
E 現金同等物
現金同等物では「現金や現金同等物の増減」を示しています。
ここには現金だけでなく、3ヶ月以内に満期の来る定期預金、譲渡生預金なども加わってます。
つまり流動性のある資金はいくらかを見ることができます。
チェックポイントとしては前期に比べて増えていれば経営状態も良いと言えます。
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