「利益を得る」VS「損を抑える」どっちが大事?
こんな問いをしたら、感覚的には利益を得ることが大事なように感じますが、実は投資においては「どれだけ損を抑えられるか」が大事になります。
例えば100万円あったとして、50%の損(-50万円)したとして、残った50万円を元の100万円にするために必要な利益率は100%(つまり2倍)になります。
掛け算割り算の世界では、2で割ったから2を掛ければいいという単純な話ですが、元本がある投資の世界では損益率が平等ではありません。
表からもわかるように、20%の損をしただけでも戻すためには5%を上乗せした25%の利益を出さないと元に戻すことすら難しいです。
自分が採用している投資手法がどれだけの勝率・利益率なのかを把握していない場合を除いて、基本的には損切りは10%いかに抑えておくのが無難でしょう。
塩漬けしてしまう人の心理を理解しよう
プロスペクト理論
ここで心理テストをしてみたいと思います。以下の2つの質問のどちらがいいか選んでください。
- 100%の確率で50万円を失う
- 50%の確率で100万円を失う。50%の確率で何も失わない
さて、この2つの場合、どちらがいいでしょうか?
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・・・・・・・・・・・・・・・・・どうでしょうか?
実はこの2つの質問の期待値は両方とも-50万円なので、理論的には同じなのです。
仮に100回繰り返したとしても理論的には「5000万円を失う」に収束していきます。
ですが、この質問をするとほとんどの人が②番を選択します。
この結果を受けた心理学者が考察するに、「人は無意識に確定的な損失を回避しようと考えてしまう」ということがわかりました。
つまり先ほどの2つの質問でいうと
①100%の確率で50万円を失う

②50%の確率で100万円を失う。50%の確率で何も失わない

↑しかし100万を失うことに意識が向いていない
と言った心理が無意識に働いてしまうのです。
この心理的な傾向性をプロスペクト理論といいます。
人は根本的に損を広げやすい
ここで先ほどの理論を株の話に置き換えてイメージしていきましょう。
先ほどの質問をもう一度見てみると
- 100%の確率で50万円を失う
- 50%の確率で100万円を失う。50%の確率で何も失わない
このようになっています。
では少し文章をいじって見ましょう。
- 今損切りすれば、50万円を失う
- (損切りしなければ)50%の確率で100万円を失うかもしれない。(でも、もしかしたら50%の確率で元に戻るかもしれない)
このように中身をほとんど変えずに文章を変えてみました。
でもここで考えて欲しいのですが、②番のように「50%の確率で元に戻る」と言ったことは現実世界ではまずわかりません。
ですので、さらに現実的な文章に書き換えると・・・
- 今損切りすれば、50万円を失う
- (損切りしなければ)もしかしたら100万円を失うかもしれない。(でも、もしかしたら元に戻るかもしれない。)
という風に「確定的損」VS「あやふやな損?」と言った構図になります。
プロスペクト理論からすると②番を多くの人が選択して、株を塩漬けしてしまうのです。
さらに言及しておくと、先ほどは50%の確率の損得が分かっていたのでどちらを選んでも結果は同じ(に収束していく)なのですが、もしプロの投資家から見て「この状況で損切りしないと90%の確率で100万円失うな・・・」と言った状況なのだとしたら、②番の期待値は-90万円になってしまい、①番を選んだ方がよかったとなるのです。
プロの投資家が含み損を持っていてもナンピン買いをできるのは、含み損になることを前提に少額ずつナンピン買いしていたり、含み損になった状況でも確信に近い経験則やデータを持っていることが多いです。
あなたがそのようなプロの投資家に近い確信的な経験則やデータを持っているのであれば塩漬けしてもいいのですが、そうでない場合は損切りをしっかり設定しましょう!